男性に背骨の模型で説明をする女性医師

近年、「腰の痛み」を訴える人が増えています。従来から存在する高齢の方に多い慢性的腰痛に加えて、20~30代の若者でも、「腰痛」に苦しむ人が増えています。

身体に痛みを感じたことがある人の中でも、ずば抜けて1位の58%の人が「腰痛」を感じていることがわかっています。その内、若者に多い病気である「分離症」の原因予防策について紹介します。



分離症の2つの種類と5つの症状!治療法とは


1)2種類の分離症とは

椎間板ヘルニアや慢性腰痛と比べて、あまり聞きなれないこの「分離症」ですが、若者やスポーツ選手に多く、一般の人の5%、スポーツ選手の30%~40%が「分離症」になっています。

二つの種類の分離症について説明します。

(1)分離症

「腰椎分離症」や「脊椎分離症」と呼ばれ、腰椎の椎間板に前側にある椎体(ついたい)と後側にある椎弓(ついきゅう)が離れてしまった状態を指します。

腰椎のどこにでも起こるものではありません。腰の下部、特におしりに近い第五腰椎に起こりやすくなっています。

(2)すべり症

椎体と椎弓の間に分離が生じると、椎体が前後にずれてしまうことがあります。これを「分離すべり症」といいます。20~30代の男性に多くみられます。

まれに、分離を伴わず椎体が前後にずれてしまう場合もあります。これを「変性すべり症」といいます。これは40代の女性に多くみられます。

2)分離症の5つの症状

(1)分離症

椎間板ヘルニアや一般的にぎっくり腰と呼ばれる急性腰痛症のように突発的な痛みはないのが特徴が下記です。

・普段は何ともないのに運動すると痛くなる

・長時間立っていたり、座っていたりすると痛くなる

・腰を反らすと痛い

などの症状の場合は、分離症の疑いが強いと思われます。普段からトレーニングをしているスポーツ選手などでは、自覚症状のない人もいますが、

老化による筋肉の衰えから、痛みが出る場合があります。

(2)すべり症

分離症に伴い「すべり症」になってしまうと、個人差はありますが、

・大腿部が痛くなる

・足先がしびれる

などの症状が出てきます。

慢性的な腰痛に加え、歩くたびに下肢のしびれを感じる場合があります。また、重度の「すべり症」になると、排尿排便機能に支障を来す場合もあります。

smiling senior woman and doctor meeting

3)分離症の2つの原因

(1)腰椎分離症・脊椎分離症の原因

先天性の発症と、後天性の発症があります。先天性の場合はうまれつきのもので、椎体と椎弓の分離以外にも、椎体自体の変形がみられるものも多く、その場合、重度の「すべり症」を生ずる場合があります。

後天性のほとんどは、成長期である中高生の間にスポーツで、繰り返しジャンプや腰の回旋などを行い、脊椎に負荷を加えたものが蓄積し、脊椎が疲労骨折を起こしたものだと考えられています。

まだ骨が成熟していない成長期の発症がほとんどだと言われています。

(2)すべり症の原因

分離を伴う「分離すべり症」は、椎弓から離れた椎体が、安定性を失ってしまう時に引き起こされます。

これは、成長期では骨が大きくなるなどの変形によるもの、壮年期では、老化による椎間板の変形によるものであると言われています。

一方、分離を伴わない「変形すべり症」は、主に老化による椎間板の変形によるものとされています。

4)分離症の3つの治療法

(1)保存療法

分離症の治療で第一に取られる、コルセットを使った治療法です。安静を保ち、痛みを出さないためであるのはもちろんですが、早期発見の場合であれば、半年間ほどの治療で分離してしまった部分の骨癒合、つまり骨をくっ付けることが可能です。

この際、使用するコルセットは市販のものでは効果が確認されておりませんので、
整形外科で腰部の型をとり、作ったものを使用します。

(2)薬物療法

薬を使い、痛みを和らげる治療法です。消炎鎮痛剤を使い、炎症を抑え、痛みを和らげるか、もしくは筋肉弛緩剤を使い、張ってしまった筋肉をほぐし、痛みを和らげます。

この治療法は痛みに対するものなので、根本的に分離症が治るわけではありません。

(3)手術療法

保存療法でも効果が見られない場合の治療法です。「分離症」は椎体と椎弓が離れてしまった不安定な状態が原因であるので、脊椎固定手術という、治療が行われます。

この手術では、不安定な椎骨同士を金属の固定器具で固定して動きをなくします。

また、椎間板変形の少ない少年期であれば、分離部修復手術という、分離した部分を直接つなぐ方法がとられる場合もあります。

Stethoscope in hands

5)分離症の3つの予防策

(1)運動を控えること

中高生などの成長期にスポーツをする子どもは、毎日休みなく運動をしがちです。しかし、分離症は激しい運動の蓄積によるものなので、2・3日に1日、休みを取り、運動をしないことが大切です。

(2)クールダウン

運動後にストレッチをして、身体をほぐすことをしないと、動かした筋肉が硬直してしまうことがあります。硬直すると血行が悪くなり、疲労が蓄積されやすくなるため、運動後は下記のクールダウンを行いましょう。

・床に寝た状態で腰をゆっくりひねる

・正座をした状態で前かがみに伏せる

・仙骨のまわりにあるおしりの筋肉と太ももの外側の筋肉をほぐす

など、ゆっくり呼吸をしながら行い15分~20分かけてクールダウンをすることが大切です。

(3)腰回りの適度なトレーニング

適度に腰の周りの筋肉(腹筋・背筋)を鍛え、安定・補強させないと、身体の重みや老化から、椎体が変形してしまう場合があります。

普段運動をしない人は特に、腹筋と背筋を鍛え、身体のバランスを安定させることが大切です。

6)分離症対策の2つのエクササイズ

日常生活の中でも、ちょっとした時間にできるエクササイズを紹介します。
分離症を防ぐために、腰の周りの筋肉を意識して行います。

(1)腰の周りの筋肉をほぐす

①仰向け姿勢

仰向けになり、両足を膝を抱えるように曲げます。その状態で上体は上を向いたまま、息を吐きながら、両足を右に10秒間かけて倒します。
同じように息を吐きながら左に10秒間倒します。これを左右2セット行います。

②正座姿勢

正座になり、ゆっくり呼吸をしながら、顔を床に近づけていきます。このとき両手は頭の先の方に伸ばしておきます。これを20秒間行います。

③うつ伏せ姿勢

うつ伏せになり、肋骨の横辺りに手を付きます。
そこからゆっくりと呼吸をしながら手を伸ばし、上体を床から離していきます。
このとき顔は身体の動きに沿って正面を向きます。
これを20秒間行います。

(2)腰の周りの筋肉を鍛える

①うつ伏せ姿勢

うつ伏せになり、ひじが肋骨のすぐ横に来るように手を横に構えます。
そこからひじで床を押し、つま先とひじで体を支えます。
これを5秒間×5セット行います。

②仰向け姿勢

仰向けになり、ひじが直角に床につけるように上体を起こします。
そこから腰をすこし持ち上げ、かかととひじで体を支えます。
これを5秒間×5セット行います。



今回のまとめ

1)2種類の分離症とは

2)分離症の5つの症状

3)分離症の原因

4)分離症の3つの治療法

5)分離症の3つの予防策

6)分離症対策の2つのエクササイズ

分離症は、成長期に発症しやすい病気です。また、早期に発見できれば治りやすい病気でもあります。
日常生活でちょっとでも自分の身体をいたわり、休息を取ることが大切です。