レントゲン写真を見せる男性の医師

「すべり症」は、腰椎を形成している一部の椎体がずれて痛みを生じる病気ですが、世間一般ではそれほど知られている病気ではないかも知れません。

今回は、このすべり症の原因治療法、予防のポイントなどについてご紹介します。 






すべり症の3つの症状!2つの治療法とは


1)3種類のすべり症

腰椎は第1腰椎から第5腰椎まであり、どこから見てもきれいに並んでいます。

通常は簡単にずれたりしませんが、「椎間関節」と呼ばれる背骨の関節が壊れたり、「椎間板」の異常などによって骨がずれてしまうことがあります。これを「すべり症」と呼びます。 

すべり症は、その原因によって下記に分かれます。

(1)形成不全性すべり症

このすべり症は非常に確率の低い症状です。生まれながら、もしくは幼少期の発育の段階で問題があるために生じると考えられています。ですので、年齢の若い頃から症状が現れるのが特徴と考えられます。

(2)分離すべり症

この症状の原因は「分離症」です。この分離症が起因となりでずれてしまうものです。

椎弓の一部の、突起の隙間部分が割れてしまい、椎弓と椎体(背骨の後ろの部分と前の部分が離れる)状態になり、椎体がすべってしまうのが分離すべり症と呼ばれます。

(3)変性すべり症

この症状は歳を重ねると、それだけ起こる可能性が増える病気です。

加齢によって、椎骨を支持している靭帯、椎間板、椎間関節が弱体化し、椎骨を支えきれなくなってすべってしまうことで起こります。

症状が起こりやすいの50代以降の女性が圧倒的に多く、起こりやすいのは第4腰椎です。

2)すべり症の3つの症状

すべり症の主な症状は以下の3つです。 

(1)腰痛 

(2)下肢痛 

(3)下肢の痺れ 

この病気では「腰部脊柱管狭窄症」と同様の症状が出るといわれています。短い距離なら歩けますが、立ったり、座ったりしているとお尻や太腿が痺れたり、痛くなったりして歩けなくなってしまいます。

ただ、少ししゃがんで休むと楽になってまた歩けるようになるのが特徴的です(間欠跛行)。 なお、変性すべり症の起こる部位は「馬尾神経」がまとまってある部分であり、排尿、排便に支障をきたす場合があります。

さらに「会陰部障害」という股のつけ根から陰部にかけての知覚障害やほてり感が出ることもあります。 

3)3タイプ別のすべり症の原因

すべり症には3つのタイプがあると述べましたが、そのうちの一つ「形成不全すべり症」は、生まれつき脊椎の発育に問題があって起こるもので、非常に稀なものだと考えられています。

したがってここでは、ほかの2つのすべり症の原因について記述します。 

(1)分離すべり症の原因 

分離すべり症は、「分離症」が原因でずれてしまうものです。分離症は椎弓の一部である上下の関節突起の間の部分が割れ、連続性が絶たれて椎弓と椎体とが離ればなれになった状態で、第5腰椎に多いのが特徴です。

分離症自体は日本人の5~7%くらいにあるといわれていますが、そのうちの一部がすべり症として発症します。 分離症は、骨が成熟していない少年期にスポーツなどで腰に繰り返し負担がかかることで発症するといわれています。 

(2)変性すべり症の原因 

最も頻度が高く、手術が必要となる人の多くはこの変性すべり症で、第4腰椎に多く見られます。加齢による腰椎の老化が原因の一つと考えられ、女性に多い病気です。

閉経の時期(50~60歳頃)に発症することが多いといわれ、このことから、女性ホルモンの減少などによる「骨粗しょう症」の進行によってそれまで支えられていた骨が支えきれなくなってこの病気が起こるのではないかと考えられています。 

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4)すべり症の2つの治療法

すべり症の治療法としては、「保存的治療」と「手術」があります。 

(1)保全的治療 

すべり症は悪性の病気ではないため、ひどい痛みが出ても多くの場合、安静や薬剤による治療などで良くなる場合が多いといわれています。以下にその治療法を整理します。 

・薬による治療 

薬については、腰部脊柱管狭窄症と似た症状が出るため、通常の鎮痛剤だけではなく、血流を良くする「プロスタグランディン製剤」を使用する場合があります。この薬によって間欠跛行が改善したり、下肢の痺れや痛みが取れたりします。 

・ブロック治療 

下肢痛がひどい場合にはブロック治療を行います。これには、「神経根ブロック」と「硬膜外ブロック」がありますが、硬膜外ブロックは薬の量がやや多いのでだいたい2週間という期間を区切ってブロック治療をする場合が認められます。 

・理学療法 

一旦良くなったものの、そのまま回復せずに動くとまた痛みが出るなど症状を繰り返す場合には、コルセットなどを使用します。

コルセットは、症状や患者の活動性に合わせて使用の可否を決めます。但し、下肢の痛みに加えて腰痛がひどい場合にはコルセットを作成し、ある程度腰の動きを制限することがあります。 

(2)手術 

手術は、保存的な治療で症状が改善しない場合に行います。絶対的な適応は、「日常生活に不自由を感じている場合」、「膀胱直腸障害が出ている場合」、「痛みが激しくなっている場合」、「間欠跛行で歩行距離が100m以内になってしまう場合」などです。

以下に手術の方法を簡単に整理します。 

・除圧術 

神経を圧迫している部分を削って圧力を取り除く手術です。すべり症の治療では、椎間関節が非常に大切なので、それを壊さないように神経を圧迫している部分だけを削ります。 

・脊椎固定術 

不安定性を伴うすべり症に対しては、除圧だけではなく、脊椎の固定が必要となります。

最近では後方からのインストゥルメントが発展し、器具も使いやすくなって移植骨も入れやすくなったため、後方からアプローチする「後方椎体間固定術」が多く行われています。 

5)すべり症の4つの予防方法

腰痛のほとんどは、日常生活における何気ない姿勢や動作によって引き起こされます。すべり症に対する決定的な予防策はありませんが、腰への負担を日頃から減らすように工夫することが発症を防ぐことにつながります。 以下に日常的な予防策を整理します。 

(1)姿勢 

長時間、同じ姿勢をとり続けないことが大切です。ただ座っているだけでも腰には大きな負担がかかっています。適度に休憩し、ストレッチをするなどして緊張をほぐすようにします。 

(2)動作 

ものを持ち上げたりする際には、腰を落とし、自分の身体のほうに引き寄せてから持ち上げるようにします。中腰や捻りながら持ち上げることは避けましょう。

自分より高い位置にあるものを取るときは、踏み台などを利用し、背中を反らさないようにするなど工夫が必要です。 

(3)筋力強化 

背筋や腹筋を鍛えることでお腹の周りの筋肉が「コルセット」の役割を果たし、負担に強い腰をつくることになります。

また、ストレッチも合わせて行うことで背筋、腹筋を柔らかく保てば、痛みの軽減につながります。 

(4)食事

骨を丈夫にする食べ物を摂るようにします。小魚類は意識して摂りましょう。野菜は葉物類でキャベツやチンゲン菜。ブロッコリーやオクラなどもカルシウムを多く含みます。枝豆やアーモンドも予防に適した食べ物です。 

なお、肥満体型は背骨のカーブを不自然にし、腰にかかる負担を増大させます。適正体重の維持に努めるようにしましょう。 






今回のまとめ 

1)「すべり症」とは、椎間関節と呼ばれる背骨の関節が壊れたり、椎間板の異常などによって骨がずれてしまう病気である。 

2)すべり症のおもな症状は、「腰痛」、「下肢痛」、「下肢の痺れ」の3つである。 

3)すべり症には、「分離すべり症」と「変性すべり症」があり、前者の原因は骨が成熟していない少年期にスポーツなどで腰に負担を繰り返しかけたこと、後者は、加齢による腰椎の老化がおもな原因といわれている。 

4)すべり症の治療法には、「保存的治療」と「手術」があるが、この病気は安静や薬剤などによる治療で良くなる場合が多いため、まずは保存的治療を進める。 

5)日常的な予防策としては、「長時間同じ姿勢をとり続けないこと」、「ものを持ち上げたりするときには注意すること」、「背筋、腹筋などの筋力強化」、「骨を丈夫にする食べ物を摂る」などが挙げられる。