MRIの画像を診断する医師

腰の病気で有名な病気の1つが腰椎椎間板ヘルニアです。一般的には「腰のヘルニア」「ヘルニア」と呼ぶことが多いようです。

イメージとしては、治りにくいとか、手術が必要といったものが多いようですが、実際にはどうなのでしょうか。今回はヘルニアの治療法手術についてご紹介いたします。



ヘルニアの3つの治療方法解説!検査・手術内容とは


1)ヘルニアとは

(1)髄核が外へ飛び出してしまう病気

背骨の椎骨と椎骨の間には椎間板という軟骨がはさまっており、背骨に受ける衝撃を和らげるクッションのような役割をはたしています。

椎間板の中心には髄核があり、髄核の周りを線維輪が取り囲んでいます。この椎間板の中の髄核が外へ飛び出した状態を椎間板ヘルニアと呼びます。

(2)30代以降老化とともに病気の可能性が高まる

椎間板の髄核に含まれている水分量は20代がピークでその後、30代から徐々に失われていきます。それとともに、椎間板の弾力性も失われていき、椎間板への負担が大きくなります。

そこへ無理な力が加わると、老化した線維輪がはみ出したり、亀裂が生じて中の髄核が腰部の脊柱管に飛び出して神経周囲に炎症がおこるため、腰に痛みが生じます。

2)ヘルニアの4つの主な症状

(1)神経の圧迫

髄核が背中側に飛び出すと、馬尾や神経根を圧迫して腰痛が引き起こされます。

(2)足のしびれ

神経は脚へ伸びているため、脚に電気が走るような痛みやしびれがおこります。

(3)片側に痛みが集中

ほとんどは、左側の腰と脚というように身体の左右片側におこります。

(4)排便・排尿の筋力低下

ただし、髄核が馬尾を圧迫した場合は腰だけでなく両脚の痛みやしびれ以外にも、筋力低下や排便や排尿の機能が障害される膀胱直腸障害という重度の症状があらわれます。

膀胱直腸障害は、放っておくと元に戻らなくなるので、注意が必要です。なお、遊離脱出型の痛みはヘルニアが小さくなれば、痛みは自然となくなります。

問診を行うドクター

3)ヘルニアの3つの治療法

(1)基本は安静と薬物療法

痛みが強い時は神経への刺激や炎症をおさえるために、患者が最も楽な姿勢で安静にします。腰に負担がかかる日常動作や運動は禁止です。

安静を保ちながら薬物療法を行います。

使用されるのは、非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、湿布薬や塗り薬、坐剤などですが、これらの効果がない場合はオピオイド鎮痛薬、神経性疼痛緩和薬を使います。

(2)薬物療法で効果が出ない時は神経ブロック注射

歩くことができないほどの激痛や薬物療法で効果がでない場合は、神経ブロック注射を行います。ここで行う神経ブロック療法は2つあり、症状により医師が判断します。

「硬膜外ブロック」は腰椎の「硬膜」の外にある空間に注射を打ちます。腰と脚の痛みに効果があります。

「神経根ブロック」は神経根に障害がおこっている場合は、神経根に直接注射を打ちます。腰と脚の痛みに効果があり、障害のおこっている神経部位がわかっている場合に行われます。

(3)運動療法

薬物療法や神経ブロック注射で効果が出てきたら、運動療法で筋肉を緩めます。運動療法は、お尻から太ももの後ろの殿筋やハムストリングスと、太もも内側の内転筋、体感を支える背筋のストレッチが有効です。

この他、コルセットをつける装具療法や、けん引療法、電気療法を個々の症状に合わせて組み合わせます。

4)ヘルニアの4つの手術

上記のⅠ)~Ⅲ)の保存療法を3ヶ月行っても良くならない場合や、馬尾が圧迫された場合は手術を行います。

ヘルニアの手術法は4つあります。

(1)ラブ法

全国の医療機関で受けられる最もスタンダードな手術法です。基本的な手術の流れは下記のとおり。

皮膚切開→筋肉を剥離して椎弓を露出→椎弓を最小限削りヘルニアが見えるようにする→黄色靭帯を切除→神経根をよけてヘルニア切除→取り残しがないか確認→手術部位洗浄→ドレーン設置・縫合

(ドレーンは切除個所に血液がたまらないように体外へ排出する管。術後2日目に抜く。)

ラブ法では、背中から切開し傷口の大きさは3センチ~4センチ。この手術では骨移植やスクリューで骨を固定する場合にも、同時に手術を行うことができます。

手術時間は30分程度で、全身麻酔で行われます。入院期間は1週間前後です。

費用は切除の技術料7万円程度(3割負担の場合)ですが、入院費など込みで10万円前後です。

(2)顕微鏡下椎間板切除術

手術の方法はラブ法と同じですが、この方法では手術用顕微鏡を使用することで、患部を拡大し、ライトで映し出された鮮明な部位を見ながら行えます。

視野が狭くても拡大して患部をみることができるため、切開部分は2.5センチから3センチ程度です。この手術も全身麻酔で行われます。

手術時間は30分から1時間程度です。入院期間と手術費用はラブ法と同じです。

なお、ラブ法を用いるか、顕微鏡下椎間板切除術を用いるかは、医師または医療機関がどの手術法を採用しているかで決まります。

(3)内視鏡下椎間板切除術

背中から内視鏡を挿入して、手術部位を鮮明に映したモニターの映像をみながらヘルニアを切除します。切開部分は2センチと小さく、筋肉の損傷も少ないため術後の痛みが軽減されます。

患者の年齢は問いませんが、全身麻酔がかけられない心臓病等の持病がある人には行えません。手術の手順はラブ法と同じです。

手術時間は1時間弱で、1週間後には抜糸をして退院になります。先に紹介した2つの術式と比べ、この術式では医師の技量が試されます。

モニターに映る画面は平面であるため、頭の中で三次元におきかえて、狭い筒状の空間で器具を操作します。自分が身体のどこを触りどのくらいの力が加わっているかを計算しながらヘルニアの切除を行います。

そのため、日本整形外科学会では「脊椎内視鏡下手術・技術認定」という認定制度を設けています。

費用は切除の技術料10万円程度(3割負担の場合)ですが、検査や入院費など込みで20万円~25万円です。高額医療費制度対象ですが、年齢や所得により金額は異なります。

(4)経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術

直径2ミリのカメラを備えた直径6~8ミリの内視鏡を挿入して手術を行います。

この手術は他の手術と違い、椎骨と椎骨の間にある馬尾から分かれた神経の出口になっている椎間孔から、内視鏡を挿入します。この内視鏡にはカメラの他に吸引装置や手術器具を出し入れする部分もついているため、切開する傷が6~8ミリで済みます。

この手術は局所麻酔で行なわれ、手術時間は30分~1時間程度。手術後数時間で歩行が可能になり、翌日には退院できます。

非常に高度な技術が必要なこの術式は、行える医師が少ないため限られた医療機関でしか受けられません。

費用は手術費用の他検査や入院費など込みで8万円~15万円です。高額医療費制度対象ですが、年齢や所得により金額は異なります。



今回のまとめ

1)ヘルニアとは椎間板の中の髄核が外へ飛び出した状態をいい、腰以外にもおこる

2)ヘルニアの症状は左右どちらかの腰と脚に電気が走るような痛みやしびれがおこる

3)ヘルニアの治療は薬物療法、神経ブロック注射、運動療法の保存療法と手術