患者に資料を説明する男性医師

慣れない作業をして翌日背中が痛くなった、というようなことはよくあることです。しかし、背中の一方だけという場合は、内臓の病気が潜んでいるかも知れないので注意が必要です。

今回は背中の痛みが左側に現れる場合の原因と対策について見ていきます。



背中の痛みが左側に現れる3大原因!対処法とは


1)背中の痛みが左側に現れる5つの代表的症状

背中の左側に現れる痛みは、個人差もあり、はっきりと分類することはできませんが、概ね以下の5つが代表的なものです。

(1) 短時間(数分程度)の発作的な圧迫痛

(2) 30分以上続く息が詰まるような激しい痛み

(3) むかつきや嘔吐を伴う比較的急激な痛み

(4) 空腹時や食後に発生する重苦しい痛み

(5) 体重減少や黄疸をともなう広範囲の痛み

2)背中の痛みが左側に現れる3大原因

背中の痛みが左側だけに現れる原因は、体の左側にある臓器の疾患が主に考えられます。

(1) 心臓の疾患

心臓の疾患による痛みは発作的に起こるものが多く、数分間で消えるものや30分以上継続する痛みがあります。いずれにしても、速やかに専門医を受診することが必要です。

(2) 胃・十二指腸の疾患

胃・十二指腸の疾患は、食欲不振、吐き気、嘔吐など食事に関連した症状をともなうことが多く、また食後や空腹時などに痛みを感じるのも特徴の一つです。

(3) すい臓の疾患

すい臓の疾患で自覚症状が現れることはあまりありません。しかし、症状が現れた時には既に進行している場合が多く、体重減少や黄疸などを伴うことがあります。

3)背中の痛みが左側に現れる場合の3つの対処法

上記の通り、心臓、すい臓の疾患が痛みの原因である場合、患者の側で出来ることはあまりありません。すぐに専門医を受診しましょう。

只、胃・十二指腸の疾患が原因の場合は、痛みを軽減するいくつかの方法があります。

(1) 座って前かがみになる

(2) 胃を休ませる(絶食、糖質・アルコールを控える)

(3) 副交感神経を高めてストレスを和らげる(腹式呼吸、十分な睡眠)

Doctors and nurses discussing together

4)左側の背中の痛みが続く場合に考えられる7つの病気

左側の背中の痛みが継続する場合は、以下の疾患の可能性があります。

(1)狭心症

冠状動脈が動脈硬化を起こし、動脈が狭くなったり詰まったりして、心筋へ送る血液が不足し、心筋が酸欠状態になった症状。悪化すると心筋梗塞など生命にかかわる病気を引き起こします。

(2)心筋梗塞

冠状動脈が完全に詰まってしまい、心臓に血液が送れなくなって心臓が壊死してしまう疾患。1回の発作で4人に1人は死亡するほど危険な病気です。

(3)急性胃炎

暴飲暴食やストレス、非ステロイド性抗炎症剤などの薬の服用等、様々な原因によっておこる胃粘膜の炎症で、通常は安静に過ごすことで2~3日で回復します。

(4) 胃・十二指腸潰瘍

ピロリ菌、非ステロイド性抗炎症剤、胃酸などによって、胃や十二指腸の粘膜が傷つけられ、粘膜や組織の一部がなくなる病気で、痛みや不快感に加え、悪化すれば吐血や下血などの症状がおこることもあります。

(5) 胃がん

胃壁の最も内側にある粘膜内の細胞が、がん細胞になって無秩序に増殖を繰り返すことで引き起こされます。

喫煙や塩分の過剰摂取などの生活習慣やピロリ菌への持続感染などでリスクが高まると言われています。

(6) すい炎

すい臓から分泌される膵液の消化酵素によって、すい臓自体が消化されて炎症を起こす病気です。

アルコールや胆石が原因と言われていますが、原因不明のものも少なくありません。

(7) すい臓がん

症状が現れにくく発見が難しいがんです。転移を起こしやすく、手術も難しい上に切除しても再発することが多いなど、最も治療の難しいがんと言われています。

すい臓がんの原因は、はっきりわかっていません。

5)左側の背中の痛みが続く場合にすべき6つの検査方法

背中の左側の痛みが続く場合、対象となる臓器により、以下の検査方法があります。

心臓の疾患(内科・循環器科)

(1) 心電図

狭心症が疑われる場合、発作が起きていない時の心電図はほとんど正常なことが多いため、運動をしながら心電図(負荷心電図)をとります。

心筋梗塞の発作では、時間とともに特徴的な心電図変化が現れます。

(2) 血液検査

心筋梗塞では、心筋細胞が破壊されて細胞から血液中に漏れてくる酵素の量を調べることで診断できます。

胃の疾患(内科、消化器科)

(3) バリウム検査

バリウムを飲んで、胃の形や影をX線で撮影します。胃の全体の動きをチェックする事ができますが、多少の被ばくがありますので、妊婦さんは受けられません。

(4) 内視鏡検査

口または鼻から内視鏡を入れて直接食道、胃、十二指腸を目で観察する検査ですので、粘膜の微細な変化を見逃しにくい利点があります。

ただ、口から内視鏡を挿入する場合は、カメラを飲み込む時だけではなく検査の間中、嘔吐感が続くこともあります。

すい臓の疾患(内科、消化器科)

すい炎は血液検査による診断が基本です。血液中のアミラーゼという酵素の値が高いのがすい炎の特徴です。血液検査はすい臓がんでも用いられます。

(5) 超音波検査

腹部に超音波を当てて、すい臓の状態を調べます。すい臓以外の周囲の臓器の状態も同時に調べることができ、他の疾患と識別することができます。

(6) CT検査・MRI検査

身体を輪切りにした画像や、身体のさまざまな角度からすい臓の画像を撮影します。

Doctor taking notes about patient

6)左側の背中の痛みが続く場合にすべき3つの治療方法

前述の病気と診断されたら、治療が必要となります。基本的には投薬治療と手術がありますが、胃の疾患ではピロリ菌除菌が必要になることもあります。

(1)投薬

狭心症では動脈の働きを助ける薬物が、すい炎では症状に応じて鎮痛剤、抗菌薬、消化酵素薬、タンパク分解酵素阻害薬などが投与されます。

尚、急性胃炎では市販薬でも2~3日で回復する場合が多くあります。

(2)手術(化学療法、放射線治療)

心筋梗塞は一刻を争う疾患です。発症した場合は、できるだけ早くカテーテル検査を受けて、詰まった冠動脈をもう一度血液が流れる状態に戻す「再灌流療法」を行うのが理想です。

只、近くにカテーテル治療ができる病院がない場合は、まず近くの病院で薬による再灌流療法を受けてから、遠くのカテーテル治療ができる病院へ行ってステント治療を受けるという選択が良いでしょう。

発症から6時間以内が再灌流療法に有効な時間と言われています。

胃がん、すい臓がんも手術が第一選択肢となります。胃がんは抗がん剤や放射線があまりきかないがんということからも、手術でがん組織を取り除くことが重要と考えられています。

い臓がんでは、広範囲に広がっている「進行がん」や、切除手術で取りきれないがんに対しては、放射線療法、化学療法に加え、免疫療法、温熱療法などが行われることがあります。

(3) ピロリ菌除菌術

胃・十二指腸潰瘍では、投薬治療や内視鏡的止血治療に加え、ピロリ菌が見つかった場合、ピロリ菌除菌治療を行います。

除菌に成功した場合、1年間に再発する人の割合は、除菌できなかった場合に比べ、胃潰瘍で1/5以下に、十二指腸潰瘍では1/10以下に減らすことができます。

7) 左側の背中の痛みへの4つの予防ポイント

予防のポイントは疾患の原因を取り除くことですので、心臓疾患の場合は動脈硬化の予防、胃はストレスと食事、すい臓はアルコールを控えることが重要になってきます。

(1) 禁煙

たばこに含まれるニコチンが副腎を刺激し血圧を上げるホルモンが分泌されるだけでなく、交感神経も興奮させるために血圧が上がります。

高血圧は動脈硬化の大きな要因ですから、喫煙によって動脈硬化は進行します。また、喫煙は活性酸素を大量に発生させ、血管内の酸化ストレスを高め、動脈硬化を助長します。

このため、禁煙するだけで動脈硬化の大きなリスクを取り除くことができます。

(2) 糖質の摂取を減らす

糖質を制限することで食後高血糖を改善し、動脈硬化の進行を抑えることができます。

また、糖質を減らすことで、ブドウ糖の代替エネルギーとしてのケトン体が増加し、血管内の炎症を抑制して動脈硬化を改善します。さらに、低糖質の食事は胃にも負担が少ないです。

(3) ストレスを軽減する

胃はストレスに敏感な臓器で、体の不調の兆しをいち早く知らせてくれます。

胃の不調を感じたら、思い当たる原因をとりのぞき、出来るだけリラックスできる環境に身をおきましょう。

(4) アルコールを控える

すい臓の疾患は原因不明な点も多いですが、40%程度はアルコールが原因と言われています。

すい臓の疾患は自覚症状が出た時には既に進行している場合が多いので、後悔しないためにも、アルコールの量は控えましょう。



今回のまとめ

1) 背中の左側が痛む場合は、それに伴う症状により可能性のある疾患が推測できます。

2) 背中の左側が痛む場合は、体の左側にある臓器の疾患が原因である可能性があります。

3) 心臓やすい臓の疾患の場合、個人で対処できることはあまりありません。命の危険性もありますので、速やかに受診しましょう。

4) 背中の左側の痛みが続く場合、主に7つの疾患が考えられます。特に心筋梗塞は一刻を争う病気です。

5) 背中の左側が痛む場合の検査は、対象となる臓器により異なります。

6) 背中の左側が痛む場合の治療は、主に投薬と手術です。

7) 背中の左側の痛みを予防するポイントは、「動脈硬化予防」、「ストレスの軽減」、「禁酒、節酒」です。